市販の睡眠薬と処方されたものの違いとは?

市販の睡眠薬と処方されたものの違いとは?

代表的な市販の睡眠薬として第1世代抗ヒスタミン薬であるジフェンヒドラミン(ドリエルなど)が挙げられます。

 

第1世代抗ヒスタミン薬(一部の第2世代抗ヒスタミン薬を含む)は脳内移行率が高く、覚醒系の神経伝達物質であるヒスタミンの受容体(大脳皮質)を競合的に阻害することで眠気や精神運動機能の低下を生じさせます。

 

ジフェンヒドラミンを用いた睡眠改善薬は、副作用である眠気を効能効果として利用した一般用医薬品です。

 

短期服用時のジフェンヒドラミンの催眠作用として、入眠潜時の短縮、中途覚醒時間の短縮、睡眠効率の増加、レム睡眠の抑制などが知られています。

 

しかしながら、ジフェンヒドラミンによる睡眠の質の向上、不眠症の治療効果に関する報告は少ないです。

 

健常者を対象とした終夜睡眠ポリグラフ試験では、プラセボと比較してジフェンヒドラミン服用時に有意な睡眠の質の向上は認められていません。

 

不眠症患者を対象とした臨床試験が少数ありますが、いずれも1週間から1ヶ月の短期投与試験です。

 

それらによると睡眠日誌による主観評価では、プラセボ服用時と比較してジフェンヒドラミン服用時に入眠潜時が有意に短縮しましたが、終夜睡眠ポリグラフでは有意な改善は認められませんでした。

 

不眠高齢者に対するジフェンヒドラミンの有効性は乏しく、最近ではジフェンヒドラミンの推奨レベルは「very low」とされています。

また小児の睡眠障害に対する有効性のエビデンスは極めて乏しいです。

 

夜驚症の不眠症状に対してジフェンヒドラミンの短期投与(1週間程度)が有効であったとする報告があるのみです。

 

小児の不眠症(特発性不眠症を含む)に対してジフェンヒドラミンを用いるのは控えるべきです。

 

ジフェンヒドラミンの安全性が確立されていないことについても留意する必要があります。

 

ジフェンヒドラミンを就寝前に服用した際の代表的な副作用として翌日の持ち越し効果が挙げられます。

 

ジフェンヒドラミンの服用翌日には、作業効率低下や運転ミスなどの精神運動機能の低下、日中の身体活動量の低下などの強い鎮静が認められます。

 

ジフェンヒドラミンの消失半減期は5~8時間ですが、上記の臨床研究では血中濃度が十分に低下したと思われる時間帯においても催眠・鎮静作用が残ることが示唆されています。

 

PET(ポジトロン断層法)を用いた研究によれば、ジフェンヒドラミン服用90分後の脳内ヒスタミン受容体占拠率は56%であるのに対して、服用12時間後でも45%と高いレベルを維持していたことも明らかにされており、持ち越し効果が継続する原因の1つと思われます。